■「三人の哲学者」
紀元前6世紀頃のミレトスという都市国家に、タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスという三人の哲学者が現れました。
ミレトスは現在のトルコ西岸、エーゲ海に面した場所にあったイオニア人の都市国家です。当時のミレトスは地理的な関係から、近隣諸国が地中海で交易を行う上での重要な拠点となっていて、交易の際には様々な国の人々がミレトスを訪れ文化交流も盛んに行われました。
このような状況の下で哲学が発展していったのですが、哲学的な問いが数学的な概念の発生につながったことも見逃せません。この頃の時代では、哲学者であると同時に数学者でもあった人物が多いのです。
■「ミレトス学派」
タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスの三人の哲学者は、宇宙を構成する「万物の根源(アルケー)」は何であるかを考えました。
彼らがアルケーについての考えを示すまでは、「世界は神が作ったもの」と考えるのが当たり前でした。しかしタレスたちはこの考え方から脱却し、アルケーについて、タレスは「水」、アナクシマンドロスは「無限のもの」、アナクシメネスは「空気」であると考えたのです。これらは彼らが「自然を観察すること」により導いた結論だったのです。
「神」については、誰もが納得するような合理的な説明をすることはできません。そのような考え方から脱却して、彼らは物質を構成するものについて合理的に説明しようとしたところが画期的でした。このような画期的な観点から、三人は今では「最初の哲学者」と呼ばれ、ミレトス学派に分類されています。そして彼らのように観察主義的な方法をとる姿勢が、以降の数学の発展に大きな影響を与えていくことになります。
次回からはミレトス学派の三人、タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスについて見ていきます。